王瑞雲/OhZuiun/診療所・東(ひがし)診療所/ 東京国立市東2-14-3(自由診療予約制)
2014年 1-2月号 「指きりげんまん」上口信雄著を読み直す。(後編)

 

人一人の命はお金にも、仕事にも何ものにも代えられるものでは
絶対に有りません。反対に人の命を
自分の栄達にかける人がいるのではないかと疑う日々が続きます。
 
 しかし段々と悪化する病状への不安、焦立ち、先生方への無責任な態度などで耐え切れず、
 息子からもお願いしてくれとの事で、院長先生にお手紙を書く事に致しました。
 
 永い間文章など書いた事のない者が、切実な実情を訴えるため必死に書き綴りました。
 出来上がったのは30日夕方の6:00近くになっていました。血判を捺すため剃刀で左の小指を切りました。
 
 切れすぎて血が飛び出して来ます。
それを右の親指につけ哀願の思いを込め血判を捺しました。
 
 雄治郎の痛さに比べたら・・・と。
滲む血でジッと見つめながら、この血で間に合うのなら・・・・
 
5月1日 院長先生に5月2日PM3:00に来なさいと言われる。
5月2日 院長先生にお逢い出来ると期待 院長室に行くと、
昨日の秘書の方が、院長は他の用事で代わりの
内科医師が説明するという。
雄治郎は、回復の兆しが無い。良くなる兆しもない。呼んでも何一つ反応してくれない。
 (外科手術をして下された先生は海外へ)
 
 大勢の患者さんを受け持っており、いちいち
 構ってられないかも知れませんが、私達にとっては
 今、生死を境にさまよっている雄治郎を目の前にして
 込み上げる憤りを覚え、本当にやり切れない思いです。」
 
そして5月7日 雄ちゃんはとうとう帰らぬ人となりました。
 
その後、この本には第二部があります。
「病院へ、先生へ」とあります。
 
①私の見た病院と医師
②送りつけた内容証明郵便
③届いた医師の説明書
④問われる人間性
⑤承諾書とはなんでしょう
⑥手術室をもっとオープンに
⑦患者は人間なんです
⑧先生素直になって
⑨医者は聖者
⑩先生、雄治郎にかけた夢も聞いてください
⑪戻っておいで雄ちゃん。
そして最後に「あとがき」があります。
 
 私は医療の現場に戻る立場上、もっとすごい現実を見てきました。
 ですから「医療とは何か?」しつこく自分に問うのです。
 今は、昔よりもっとひどくなっています。単に医師が不足だから
ではありません。
病人側が「何にも知らなくて他人に頼るから」です。
自分で病気にかかっても病人にならなくてすむ方法を知らず、
お医者さん達が忙しすぎてヘトヘトなのです。
医師とて生身の人です。今日本に大切なのはずっと私が言い続ける
ように、「1人の医師が1日に何人の患者さんを診るのが限界か?」
そこから始めるべきなのです。
 
 医師とて疲れます。更に毎日毎日沢山のことを説明しなくては
なりません。更に睡眠もとらねばならないのです。
私の知っている医師達は自分の生命をかけて仕事しています。
そして何人もが倒れて亡くなっています。
もっと大切な事は医学教育にかかる教育費の問題です。
私の知る限り、私立となったら、ちょっとやそっとじゃありません。
それだけかかったらかならず元手は回収する努力はするでしょう。
それが社会のしきたりです。それは又質の高い医療者が育たないことです。
本当に「医師になりたい!」「医師になって世の役に立ちたい!」と
考える子ども達がお金がないために
なれないという例もあるのです。むろん奨学金制度もありますが、
そんなにみんなが頭が良いとは限りません。
こと医療に関しては頭の良し悪しは関係ないのです。
私の様な者でもなんとか医療活動を続けられるのです。
医療と医学は別物です。
そして日本の医師達にはもっといい仕事をしていただくために
きちんとその技術力を評価する必要があります。
経験の少ない卒業したての若い医師と老練なベテランの医師の
技術が同じ点数ということ自体がおかしいでしょう?
そして二度とこの上口雄治郎君の様な不運な子を出さないことです。
ですから私はこの本を「医科大学」で医師学生達に読んでもらいたいと思います。
そして医師でない普通の人々でも知るべしです。
医師という他人に頼るとはどういう事か?
もっとも私は医療不信をあおるつもりではありません。
 それでも日頃から人は自分の健康は自分で守り、
それ以上だったら始めてお手伝いを頼む。
その生きる基本姿勢が大切です。
私の長年の研究結果では、養生、食養学を守り
そのためには学習する事です。
生き延びるため、子孫の幸せを
祈るなら各家庭で知る必要があるのです。
「食べているもので身体は出来ている」という事実です。
今日本は医師不足と言います。本当はそうでないと私は考えています。
医療者に頼りすぎる人が多すぎるだけです。
 医師に良い、人間らしい心を持った仕事をさせてあげて下さい。
それには基本的なところから、今、全て見直さねばならない時に在ると思います。
 上口雄治郎君 今、お元気でしたら立派な青年です。
私もそういう若者達を診ていますので、この本に出てくる雄治郎君
の姿を想像します。きっとご家族、皆々様を愛されて
逝った雄治郎君ですから天から私達下界の有様を見守って下れて

いるでしょう。医療界がもっと明るくなりますように!

 

 

                               王瑞雲(Wang Rui-Yun)