王瑞雲/OhZuiun/診療所・東(ひがし)診療所/ 東京国立市東2-14-3(自由診療予約制)
2013年 12-1月号 「指きりげんまん」上口信雄著を読み直す。(前編)
 
 私はずっと「医の自立を!」と言い続けて来ました。
その頃は、1945815日。弟の遺体を自分たちでタビに伏した経験からの言葉でした。
女医さんが往診に来てくださったのですが「1本の大皮に1斗のお米の交換」
が出来なかったのでみすみす弟を死なせました。
 医大を出て、結局私は東洋医学小児湯液科へ進んだのですが、
その時脱水症になっても他人に頼らずとも対応出来る方法があると知ったのです。
「無知程悲しい事は無い!」父母の言葉で私達は医師になりました。
 でも臨床医として仕事している程に医療者には限界があると知ったのです。
第一、どんなに誠心誠意仕事をしていても、医師はその本人(病人)
になりきれない! それで病人も自分の事は自分で生命を守る必要があると悟ったのです。
 自分の体を一番よく知っているのは本人であり家族なのです。
 今、全ての人が「自分でやれることを自分で実行する」ことが出来れば
病人は半分位に減ります。医師達も医師でなければ出来ない質の高い仕事が出来ます。
今の日本の医師達の時間給は本当に低い。ですから薄利多売になり、医師にとっても病人にとっても
不幸な状態になってしまうのです。
 この「指きりげんまん」という本は、平成3917日に発行されました。
著者は香川県小豆郡の主人公「雄治郎」君の祖父ちゃんに当たる方です。
私は昔、この本を送っていただきました。何度も読み返しても痛ましくて、
言葉に出せませんでした。私自身臨床医として、毎日必死に診察していても、
誤診して患者さんに危ない目に合わせたり、治せなくてがっかりさせたり
本当に穴に隠れてしまいたい位。他人様の生命にかかわるというのは
本当に無限に学習し、技術も習得せねばならないと悟ったのです。
 この「雄治郎」君は、生下時体重3715g 身長50cm 胸囲32.5cm 
頭囲33.6cmで立派な男の子です。生後2日目で心雑音があると小児科の
医師に指摘されています。3日目保育器で救急車で本土の病院へ運ばれ
血中酸素量が少ないとの事で生後16日目に「肺動脈の右腕への血管が細く
短絡手術を受けられました。幸い手術は成功し5-6日でICUを出、1か月で退院、
始めて帰宅出来ています。 体重15kg3才頃には再び手術と伝えられていました。
それでも元気で順調に育っていました。 香川県の身体障害者手帳には、
「大血管転移、心室中隔欠症、肺動脈狭窄」と病名が付けられていました。
 
■平成211月 心臓カテーテル検査で入院。
 
再び411日 入院。父親は手術に反対。それでも心臓外科の主治医の先生は
「絶対大丈夫!」とすすめされたそうです。
 
413日夜 主治医たちは手術説明。手術を不安がる父親に「今がチャンス、
90%以上の成功率を保障する」としきりに手術を勧める。そして手術は、
行われ雄治郎君は還らぬ人となりました。
 
病人の家族としてみれば、病人を人質の様に差し出している以上、
病院に対しては「お願いします」とただ頼み、すがるのみと家族の無力を嘆かれます。
 
更におじいちゃんは書かれます。「私は『雄ちゃんを援ける会』を
作ってほしかった。誤診が起因した雄治郎の病状、この無念を多くの人々の
理解で署名を取り、病院に抗議をし、マスコミの力を借りてでも問題として
探り上げてもらいたかった。」
 
これは単に雄治郎だけの問題ではなく、「今までにも、又これからも
起きるであろう人権無視の“切り捨て御免”の今の医療に対する抗議である」と。
 
この様な患者を持つ家族の素直な切実な叫びです。(続く)