王瑞雲 ブログ。論文。

「新生存学の構築を! ー公衆衛生学,疫学と薬品開発ー」  王 瑞雲 Wang Rui-Yun

2021.7.10

一卵性双生児でも「全く別人です」とお母さんたちは教えてくれていた。 私から見れば本当にそっくりで区別がつかない。

でも100パーセントのその子たちのお母さんは、笑って 「いえ、全く、違いますよ。」と言われる。 私も自分で、何組かの一卵性双生児たちを、ずっと診るようになって、その成長を観察 するようになって、本当に人は「同じ人がいない」としみじみ思い知らされたのだ。 ところで、どうしてこうも一人一人違うのだろうか?と考えていたら、 生物というのは同じ植物でも動物でも、ところ変われば、姿かたちも変わる、 ある地方で流行病「はやりやまい」がおこった時に、人々は一斉にその原因を突き止めよう とする。そしてその病の原因として、人類は、寄生虫、細菌、やビールス等を突き止め、 それが原因と決めつけ、その対応に追われて、今日に至っている。

其れができるようになったのは、まさに西洋医学的検査手段、器具類のおかげである。 西洋医学医術の発展による効果だと感謝する。

ところで、私が考えるのは、確かに、こうした近代科学のお陰で、医学の研究は 進んだけれども、それだけでは「片手落ち」でないか?という気がするのだ。 内省がないのだ。いやな結果は「他の所為だ」と考えている。

まず人は同じ人がいない。そして人は毎日2-3回は食事をするだろう。 人の体は食べ物で出来ていて、食べ物の「化身」である。 その食材、料理の仕方、食べる時刻や食べ方、人さまざまで同じでない。 更に、人それぞれの生活でも、同じでなく、精神環境も違えば、ストレスの大きさも、 違うのだ。人はいつも言うように公平でも平等でもない。 病気で明日は生きているか?不安で苦しむ人びと、 明日はまた食物が手に入るか?何時もお腹をすかせている人々、そのような人々に 「あなたは自由ですよ」と言ったって、それは嘘である。 公衆衛生上、疫学上 病気を予防したければ、真っ先に考えなければならないのは、 人々の生活が「生きていく上で、最低の要素、条件が満たされているかどうか?」を 考える事でないだろうか? 

普段から点検しておく必要があるのでないか?

つまり昔から言われるように、「衣〈医〉、食、住」は皆さん十分備えられているか? それがきちんと人々の生存力として確立され、自立出来ておられてから その後で初めて「発病する人、しない人の差が何で起きるのか?」調べる意味がある。 その時にやっと、原因のビールスや細菌、その他の微生物を病気の原因として、 「人類の敵」として考えてもよいのかもしれない。

その時に手当てとか、治療をするにしても、私は必ず効果が「ゼロかプラス」のもので あってほしいと思う。薬剤の開発に、初めから効果マイナス〈副作用がある〉のは、 使ってほしくない。モグラたたきをしているごときもので、逆にその病人を苦しめ、 永遠に医療産業の原資としているに過ぎない。病人の立場で生きている私の実感である。 ある時、ある国立大学医学部の学生6年生の男の子がおしゃべりに来ていた。 卒業は出来そうであるが、とにかく忙しくって、睡眠のきちんととれず、 食事もちゃらんぽらんだという。

そしていま教授に指名され、治験中だという。その治験とは「抗アレルギー剤」 の開発で、服用して、どんな感じになるか?血液検査などもするという。 私は彼に聞いた。「その質問項目に、貴方の睡眠や、食事について質問がある?」と。 「そんなの何もありません。ただ眠くならないか? 頭がぼーっとしないか?  そしてだるくならないか?」そんなことだけですという。 彼はそんな人体実験でも断れないというのだ。 そして忙しいと,そそくさと帰って行った。

製薬のデーター集めで驚かされた経験がある。 1970年3月開業した私であるが、数か月してある時若い男のプロパーさんが来られた。 開業して間もないので暇な私である。 「新しい薬に開発でこの治験データーを集めねばなりません。 サインしていただき印を押してくだされば、20万円差し上げます」と紙を出された。 私は気楽に引き受けようとしたが、結局は何事も話が進まず、私もお金が戴けなかった。 今から50年以上前の経験である。

人は自分で確認したものを信じた方が良いと思える。 天はすべてを見ておられる。

ある時、アメリカ、カルホルニアで夫の友人達と会食をしていた。 私達は夫がアメリカ、私が東京という結婚生活をしていた、 私が日本で根付いてしまい、仕事を捨てられなかったからである。 その時は友人たちはもう大学の研究室で、大学で教授をしておられたり、 成功しておられた人たちばかりだ。大学で薬学部の助教授をしている人が話してくれた。 彼女は言うのだ。「日本はお客さんとして素晴らしいのだって。日本へ持ってゆけば 良く売れるし、日本の人は薬大好きだってね。 だから私たちのところへ、日本向けの薬の開発の仕事が時々来るのよ」と笑いながら 教えてくれた。日本の人々の薬好きは有名らしい。

本当は薬をたくさん処方しなければ、医業が成り立たないシステムになっているのだ。 私は何も言えなかったのを覚えている。 「マイナス作用のない薬、ゼロかプラスの効果しかない薬だったら、いくらでも飲みたい。 この年をして私は一日でも元気で仕事を仕上げたいと欲張っている。


〈文責 王 瑞雲〉