王瑞雲 ブログ。論文。

「新生存学の構築を! ー男性不妊についてー」  王 瑞雲 Wang Rui-Yun

2021.2.16

 今朝のラジオを聴いていましたら、今、日本では「不妊の原因は男女各般なのに、男性が不妊治療を受ける割合は少ない」とのお話でした。しかも、その治療を受けるには、多額の医療費がかかるというのです。それでふと私の研究の一端を皆様にお伝えすることを思いつき、ペンを持ちました。まず以下のことを再確認したいと存じます。
(1)「人」の身体は自然の一部である。
(2)真理(本当の事)とは、より自然に近い事である。
(3)人の身体は、食べ物、飲み物、皮膚、粘膜から、呼吸器も含めて、体内に取り入れるものでできていて、その物質により影響を受けている。
(4)人の生命は、他の生物(動植物)の生命を頂戴して初めて維持できている。
(5)人は、未だに生命そのものを作り出せない。

 以上の5個の項目が御理解いただければ、問題の解決は早いと思えます。私が日本で個人開業医生活51年の経験で、人々の身体の変化が気になり、「大変なことになった!」と感じたのが1980年~1985年の頃なのです。まず男の子と女の子を診ていて、男の子が女の子っぽく見えて、女の子がとてもたのもしく、きつくって「あら、女の子も自立して生きなくては……」と感じたのです。それはまず、脈の変化、顔相の変化として、私の目の前に現れました。私は、小児漢方医としてスタートしていたのですが、元来のおせっかいなせいで「何でも相談屋」になっていたのです。この51年の間に「性欲」についての相談も結構ありました。男性の40~50歳くらいからの悩み、そして女性達の悩みは、結婚したものの、男性達が全く女性(妻)に興味を示してくれないとの相談でした。つまり今でもそうですが、男女共に相手を肉体的に要求しなくなったという時代にあるのです。私は、その原因の一つが、食べ物、飲み物の、「質の変化」と思いました。今私達は日本での食生活で極々普通にしていたら、1年間で約8kgの食品添加物として、いわゆる不自然なものを体内に取り込んでいると言われます。

 人体は自然のものなのに、それだけの化学的人工的な添加物を体内に入れてしまうと、新陳代謝始め免疫力が低下するのは当たり前です。  地球上で「環境ホルモン」で「種の保存」能力が落ちた生物達が、植物、動物関係なく、絶滅へと進んでいると言われて既に久しく、人類もその中に入っているのです。人類の自滅への道は、無論こうした「種の保存意欲」の低下だけでなく、科学技術の発展により「殺戮」を目的とする、あらゆる兵器の開発が進んでいるからです。ともあれ、目先の問題としての人口減としての「子どもができない」という問題に、社会は気にしていて、ずっと研究テーマとなっているのです。
 さて、私は医療の理想は「安くて身近で結果良い」ものと考えているのですが、実際の診療の中で役立ったことがありました。

(1)ある男性、50歳代の後半です。彼の悩みは、妻との関係で、全く実行できない。気持ちがあるのに身体が全く思うようにならないという話です。よくよく日常生活を細々と聞きました。そして、まず食べ物を日本の伝統食を基本にしてもらいました。日本の伝統食といっても完全な和食をと言うのではありません。無論玄米食が中心になるのですが、それも一人ずつ身体が違いますので、分つきでも良いし、雑穀をまぜての白米でもいい。パンもうどんやそば無論何でも良い。肉だって、魚でも食べて良いのですが、その量を少なめにして、野菜、穀類を多くしてもらいました。そしてその人に合わせての漢方薬を飲んでいただきました。今の時代サプリメントも良いのがありますが、サプリメントは、一般にピンキリで、経済的問題もあります。この男性の場合は食餌の改善と漢方薬エキス散の服用で元気になられ、調子良いとのことでしばらく服用されました。他に鍼灸マッサージ、民間療法ででも役に立つのがあります。

(2)ある地方から緊急で診てほしいと言われ、休日初診になったケースです。もう8年もその地方の大学病院で不妊治療を受けておられましたが、効果が出ませんでした。妻が8歳年上で44歳、夫が同じ職場での恋愛です。どうしても自分達の子どもが欲しいのです。でもとうとう病院の担当の先生に言われてしまったのです。「ミスマッチなんだから、子どもを作らなくていい!」と言われたそうで、二人の心は傷つけられ、とうとうその大学病院での治療を諦めたと言います。私自身ドクターストップで自費診療で予約制限をしている時でした。でもお話を聴く程に「子どもが欲しい!」お二人の気持ちも分かる気がして、一応診せていただくことになり、休日初診となったのです。まずびっくりしたのは、妻の身体の大きさと夫となる方の体格の違いでした。「ノミの夫婦」と言われますように、このタイプのカップルは「仲が良い」と昔から言われます。そしてお二人とも診せていただきましたが妻に当たる8歳上の姉さん「女房」は、極々普通で東洋医学的には大した問題がありませんでした。そして夫に当たる男性を診ましたら、すぐ「虚労タイプ」でとても神経がデリケートな上に肉体的に疲れやすく、冷え性でスタミナ不足です。この御夫婦はまさに男性側が原因の不妊と思えました。きっと精子が一定数あったとしても、力の弱い精子で卵子の中へ飛び入り、細胞分裂とまでいくエネルギーが足りないのだと思えました。そして私はごく当たり前に、日本の伝統食を守る事をアドバイス、各々の身体に合う漢方薬を処方しました。仮に子どもができなくても、御夫婦とも元気になってくださるはずです。そして1か月後、見事に「初めての妊娠」という報告を受けることができました。いつも言いますように、世の中には沢山の医療手段があります。それでも、食養生は、身体を構築している素材そのものの事ですから、どんな治療手段を受けようとも、抜かすことができない基本なのです。私の知る限り、日本にいる人々には、人の国籍名、性別、年齢関係なく、「日本の伝統食」が一番良いのです。

 時間が経って男子が生まれました。お母さんも高齢出産でしたが普通分娩でした。以後10年近く私はこの御家族3人の健康相談を引き受けました。そして、御家族は「移住することになりました!」と御挨拶に来られ、それっきりとなりました。お別れしてもう時間が経ちます。地球のどこかで御家族はお元気にお過ごしでしょうか?
 この51年の間に多くの人々に出会い、そしてお別れしてきました。しみじみ人とは水の如く流れゆく河の如しと実感しているのです。
 日本は、昔々の大昔にエチオピアから出発して世界へ広がったホモサピエンスとしての人々の一部の人々が3万年前に日本へたどり着き、そして次第にそこに定住する人々も増えてゆき、出てゆく人々、入ってくる人々、色々な人々が集まってファジーな社会として今に続いているのです。そう考えれば、この地ではぐくまれた人々の思いが日本の歴史と文化として引き継がれていると思えるのです。素晴らしい日本独特の伝承文化、少しでも次の世代へ伝えられれば嬉しいと考える私です。男性不妊の方々、まず自分の出来る事を試みてみたらいかがでしょうか? 身近でお金もかからず苦しくない治療法、副作用もないですから。




〈文責 王 瑞雲〉