王瑞雲 ブログ。論文。

「新生存学の構築を! ー東洋医学でいう「厥冷」に気を付けて!ー」  王 瑞雲 Wang Rui-Yun

2020.12.5

長年東洋医療と西洋医療、日本の伝統統合医療を研究しているもので、皆さんにお願いがあります。 常に「厥冷」という証に気を付けていただきたいのです。中医学、漢方医学を学んでおられる方はよくご存じ ですが、西洋医学、医療では、「厥冷」証は診断として見過ごされています。 つまり大切な証、が「無視」されています。 でも私は、昔この「厥冷」という証について、まだ知りませんでしたので、ある一人の男の子を助けることが 出来なかったのです。

24-5歳の頃の経験です。私は東京のある病院の小児科に居ました。 確か勤め始めて間もない時のことです。 大学の医局員でしたが、どうしても働かなくては生きていけないので、医局員をやめ、 教授と相談して「研究員」という形にしていただきました。 勤め先の病院では、小児科医は私一人、毎日外来で100人以上の患者さんと入院患者さん14-15人を 一人で診るのです。もちろん内科の医師はじめ他科の医師もたくさんおられますので心配はありません。

「1」 ある時一人の8か月位の男の子を診ました。 病歴は7日前に発熱して、近くの医師にかかっていました。「突発性発疹」と言われていたのですが、 毎日のように、解熱剤の注射を受け、更にそれでも熱が下がらないというので、 頓服でも解熱剤が飲まされていました。 そしてその医師の治療を受けて7日目、熱は下がったのですが「ミルク飲み人形」になってしまった。 という主訴です。ミルクを飲ませるときちんと飲みます。そして眠りつづけるのです。 お風呂に入れても目をつむったまま、そしてすやすや寝ています。 お母さんが不思議がっていたのは、どうして寝ているのでしょうね、おしっこもうんちも普通です. 咳もなし。私も診察しましも、胸の音もきれいですし、おなかも特に問題ない、 ただ少し手足が冷たく動かそうとしなかったのです。 そのころ私は漢方薬を独学を始めたばかりで、「だらんとして力ない四肢」というので 「抑肝散加陳皮半夏湯」という「赤ん坊でも飲める漢方薬エキス散」を処方、一日0点何グラムという量です。 それを分3で二日分処方しました。そしてその子は二日後外来に来ませんでした。 私は気になり、三日してこなかったので、患者さんの家を仕事が終わって帰宅する途中訪問しました。 お若いご両親がテーブルの上に置かれた仏壇に手を合わせておられたのです。 私はびっくりしてお話を聞きました。一回目の漢方薬を服用して、あんなに動かなかった息子が、 両腕を動かしたのです。そして夜になりもう一回飲ませましたら、5-6分後にパッと目を開けました。 ご両親は喜んで子どもの名前を呼んだそうです。ところがその一時間後に急に痙攣が始まりました。 すぐ救急車で大学病院へ運ばれましたが、病院へ行って一時間もしないうちに、ぴたりと心臓が止まったのです。 病院の先生方はいろいろ血液検査もしてくださったのですが、「まったく理由はわからない」ということだった のです。私はショックを受け、漢方の師に質問しました。私の先生は大阪におられます。 先生は「それは厥冷という証で、怖いですよ。こんな時は○○○という緊急用の処方で助けられるけど、 西洋医学だけしか知らない医師は、この現象に無関心だね」と教えてくれました。 以来私は特に消炎鎮痛剤解熱剤、そして漢方薬でも実証に使う処方に気を付けるようになりました。

漢方薬でも、それでくすり負けする場合があります。 つまり人は生きてゆくのには最低体内のエネルギーが必要で、 体の中で、燃え続けているから「体温」が維持できる。外から温まることは当然必要ですが、 体内でその火が消されては、生きてゆけないのです。

「2」 ある時東北地方から夜電話がありました。子ども6-7歳男の子でしたか風邪をひいて、 近くの国立大学の病院の小児科へ行きました、抗生物質と消炎解熱剤などもらって2回飲んで子どもが「 寒いよ!寒いよ!」と布団の中で泣くそうです。体温を測りましたら、 どうしても34度9分と35度しかありません。びっくりしてお電話をくださったというのです。 その時は私はもうずいぶん経験していましたので 「薬が残っていても、消炎鎮痛解熱剤はやめてください。そして次、病院へ行ったら、先生のきちんと 今回のことを報告しなさい」と伝え手当の仕方を教えました。 「暖かいショウガ湯を作り、少しの黒砂糖か、はちみつを加え、ごま油を1-2滴たらしなさい。 それをコップ一杯20-30分かけて飲ませてごらんなさい」そして湯たんぽを入れて寝かせていればよい」と 伝えました。本当は葛湯を少し加えると飲みやすいのです。 3時間後、お母さんは電話で報告してくれました。 言われたようにしましたら今は36度2分まで体温が上がり、本人は気持ちよく寝ているとのことでした。

今私は自分の診察してきた50年の総括をしています、 一枚づつカルテを読み直し、いかに私のできの悪さを再認識しているのです。 自己評価で35-40点ぐらいです。多くの患者さん達を診察させていただき、 周りのたくさんの先生方のサポートで今日まで来られました。 プラスもマイナスも、ありのままに見直すということは、私の人生にはとても大切な作業に考えるのです。

そしてこんな症例を見つけました。
「3」昭和59年1月7日4歳半の子。朝から38度の熱があり来院。 扁桃腺肥大Ⅲで真っ赤です。胸はほとんど何ともありません。くしゃみがひどく その日は外はひどく寒い日でした。そして暖かくして寝ているようにアドバイス。 急性扁桃腺炎、急性上気道炎として私は真武湯エキス散一日1.5グラム、 抗生剤のペングローブ〈今は使われていないそうです。ペニシリン系抗生物質〉と 抗ヒスタミン、整腸剤を合わせて処方しました。 そして三日分、1月9日には、平熱になり喉の赤味は消え少し残る程度、胸もきれいです。 そしてさらに三日分で治癒としました。 私はそのころは扁桃腺炎で細菌感染をする心配のある子には、抗生物質は併用していました。 この子に1月7日時点で消炎鎮痛解熱剤を使っていましたら大変だったと思います。 「体温維持」は緊急課題でないでしょうか。

世界中がビールス性感染症におびえるなら、最低体温維持できる対策を実物で保証することと思えます。 そして薬の使い方でも、少なくても「厥冷」で命を落とさないように、 東洋医学の専門家たちを西洋医学の先生方と一緒に働いていただくということが大切と思います。 私の師は元は産婦人科の医師でしたが、ご自分で体が弱いために東洋医学を学ばれました。 東洋医学と西洋医学の関係は、一枚の布の縦糸横糸の関係と教えてくださいました。 私も自分を生かすために、西洋医学、東洋医学を学習し、行きつくところ日本の伝統統合医療のすばらしさを 知ったのです。つまり利用できる医療知識は何でも使うということで、 この危機的状態を切り抜けてゆくのが良いと思います。 大急ぎで、「住居」の保障を世界中で、それぞれの社会で確保してほしいものです。 ワクチン以前の問題と思います。




〈文責 王 瑞雲〉